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高知地方裁判所 昭和33年(ワ)447号 判決 1960年12月27日

原告

右代表者法務大臣

植木庚子郎

右指定代理人

大坪憲三

今井秀吉

山田豊

高知市高須六〇五番地

被告

池沢森亀

右当事者間の貸金請求事件につき当裁判所は次の通り判決する。

主文

被告は原告に対し金五〇万九、八一九円を支払え。

訴訟費用は原、被告双方の平等負担とする。

この判決は原告に於て金一〇万円の担保を供するときは仮に執行することができる。

事実

原告指定代理人は主文第一項と同旨及び訴訟費用は被告の負担とする、との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

(一)  原告(所管庁は高松国税局)は国税滞納者である訴外小原楠衛、同小原正孝に対し、昭和三〇年四月二一日現在に於て金九一万一、七〇五円の租税債権を有していた。

(二)  右小原楠衛は被告に対し、昭和二八年八月一四日金一一二万円を弁済期同年九月一四日、その間の利息を金一二万円の定めで天引して貸付けた。

(三)  ところで右貸付については、旧利息制限法が適用されるのであるが、同法に於ては消費貸借につき利息制限法の制限を超過する利息を天引した場合には、天引利息中、同法第二条の制限の範囲内の金額と現実交付金額との合算額につき消費貸借契約が成立したものと解するのが判例である(最高昭和二九、四、一三、最高民集第八巻四号八四〇頁)から、本件の場合は金一〇〇万円と金一一二万円に対する利率年一割の計算による三二日間の利息金九、八一九円の合算額金一〇〇万九、八一九円について消費貸借契約が成立したものというべきである。

(四)  然るに被告は、同三〇年三月一二日に金八万円、同月二三日に金五万円、同年四月六日に金三七万円、合計金五〇万円を支払つたのであるが、小原楠衛はいずれもこれを元本に充当し遅延損害金はすべて免除する意思表示をもつて受領した。従つて右小原は同年三〇年四月二一日現在に於て被告に対し金五〇万九、八一九円の債権を有していたということができる。

(五)  そこで原告は第一項の滞納税金徴収のため、同三〇年四月二一日国税徴収法第一〇条及び同第二三条の一に基づき、前記小原が被告に対して有する前項記載の債権を差し押え、同日債務者たる被告に債権差押通知をなし、その通知書は同月二四日送達されたのである。

(六)  ところが被告は再三の請求にもかかわらず、右支払に応ぜず、また滞納者である小原両名もその後税金の支払いをしないので、本訴に及んだ。

と述べ、立証として、甲第一乃至五号証を提出し、証人松本邦介、同大谷明吉、同岡林操の各証言を援用し、乙号証の成立を認めた。

被告は、原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め、答弁として、原告主張の請求原因第一項記載の事実は知らないが、同第二、四、五項記載の各事実は認める、と述べ、立証として、乙第一乃至第三号証を提出した。

理由

訴外小原楠衛が被告に対して、昭和二八年八月一四日、金一一二万円を、弁済期同年九月一四日、その間の利息を金一二万円の定めで、利息を天引して貸付けたことは当事者間に争いがない。而して右貸付については、旧利息制限法が適用されるものなるところ、同法では消費貸借につき利息制限法の制限を超過する利息を天引した場合には、天引利息中、同法第二条の制限の範囲内の金額と現実交付金額との合算額につき消費貸借契約が成立したものと解するのが相当であるから、本件の場合は現実交付金一〇〇万円と約定貸付金一一二万円に対する年一割の割合による三二日間の利息であることが計数上明らかな金九、八一九円との合算額金一〇〇万九、一一九円について消費貸借が成立したものというべきである。これに対して被告が同三〇年三月一二日に金八万円、同月二三日に金五万円、同年四月六日に金三七万円、以上合計金五〇万円を各支払つたこと並に小原楠衛がこれらをいずれも元本の支払いに充当し、遅延損害金はすべてこれを免除する旨の意思表示をなしたことは当事者間に争いがないから、右小原は昭和三〇年四月二一日現在に於て被告に対し金五〇万九、八一九円の債権を有することとなつた。

ところが、証人岡林操の証言と、同証言によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第一乃至五号証によると、原告は右小原楠衛に対し昭和三〇年四月二一日現在で金九一万一、七〇五円(内金八五万三、〇七五円は相続税で共同相続人小原正孝と連帯納付の義務あるもの)の租税債権を有していたことが認められる。そこで右租税債権徴収のため、右同日国税徴収法第一〇条及び同法第二三条の一に基づいて小原楠衛が被告に対して有する前記債権を差し押え、同月二四日債権差押通知が被告に到達したことは当事者間に争いがない。

そうすると、被告は債権者小原楠衛に代位した原告に対し、前記消費貸借上の債務金五〇万九、八一九円を支払うべき義務があるものといわなければならないから、その支払いを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、九〇条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して主文の通り判決する。

(裁判官 隅田誠一)

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